ASEAN・マレーシアのブロックチェーン・仮想通貨革命

ビットコインの人気を受け、雨後のタケノコのように増えているのがアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)だ。その数は現在も増え続けており、数千種類あると言われている。

アルトコインのなかでも有名なEthereum(イーサリアム)やRipple(リップル)など知名度があるコインならともかく、こうも種類が増えると選ぶのが大変になってくる。

そこで、仮想通貨のトレーダーが利用しているのが仮想通貨比較サイトだ。多数ある比較サイトのなかで、日本語にも対応しており、ユニークな情報が得られるのが「CoinGecko(コインゲコ)」。会社を登記しているのはシンガポールだが、創業者は二人のマレーシア人青年である。

 

 

他の比較サイトとは違うひと手間かけた情報収集

待ち合わせ場所に指定されたのは、クアラルンプール郊外のショッピングモールにあるカフェ。到着すると、そこには爽やかな二人の青年が待っていた。

CoinGeckoの共同創業者、TM LeeさんとBobbyさんだ。

 

CoinGecko代表のお二人左から、TM Leeさんと、Bobby Ongさん

 

Coingeckoがユニークなのは、その他の仮想通貨比較サイトと異なり、さまざまな角度から仮想通貨を評価していること。

例えば、比較的情報を集めるのが容易な、価格、時価総額、流通量、価格上昇/下落率は、どこの比較サイトでも掲載しているが、CoinGeckoでは調べなければわからないような情報、例えば、その仮想通貨のシステムを作った開発者、その仮想通貨を購入しているコミュニティ、インターネット上での注目度などについても網羅している。

二人はこう説明する。

 

「例えば、発行後しばらくたった仮想通貨は、開発者がメインテナンスしていなかったりするが、そういう仮想通貨は将来的な進化が見込めない。逆に、開発者側がその仮想通貨を常によりよくしようと努力している場合、将来花開く可能性がある。
コミュニティについても同様で、その仮想通貨をトレーディングしているコミュニティがパワフルだと、その仮想通貨は驚異的な成長をみせる場合がある。コミュニティが追加機能とか革新的なアイデアを提案したりして話題になり、取引量が増えればその仮想通貨のマーケットは広がる。
あとは、注目度。Bingの検索結果数や、サイトのアクセス数のランキングがわかるAlexa(アレクサ)ランキングを調べて、一般社会でのその仮想通貨の人気度をチェックしている」

独自のプログラムを構築し、仮想通貨業界で有名になったCoinGeckoの二人は、マレーシア政府傘下の教育機関「MaGIC(Malaysian Global Innovation and Creativity Centre)」の支援を受けてシリコンバレーのトップ企業から学ぶ2週間のプログラムに参加したほか、世界各国の仮想通貨やブロックチェーンの会議で講演などもしている。

 

 

仮想通貨の業界のために何かしたい!

二人が出会ったのはシンガポールでのこと。

Leeさんがソフトウェアエンジニアとして働いていた会社にBobbyさんが来社。たまたまお互いにビットコインに興味があることがわかり、意気投合し、マレーシアで何かをやろうということになったのだ。ちなみに、Bobbyさんも当時デジタルマーケティングを職業としており、二人ともIT系である。

当初はさまざまな仮想通貨を購入して取引をしてみたり、コンピュータを購入して自宅でマイニングをしてみたこともあったという。

本格的にCoinGeckoを始めたのは、2014年。

「仮想通貨の業界のためになるようなことをしたい!という思いから比較サイトを始めた。当時、仮想通貨関連の情報サイトはいろいろあったけど、個人が趣味でやっているような素人っぽい作りなのも気になっていたからね」

初めは20種類のアルトコインからスタート。社員は二人だけで、自宅がオフィスだ。

現在では、1000種類以上の仮想通貨が掲載されており、数分ごとに自動で情報をとってきてアップデートしてくれるアルゴリズムを組んである。

 

CoinGeckoのwebページ

 

 

「競合の比較サイトは、もっと多くのアルトコインを掲載しているし、情報の更新も速い。でも、アルトコインを買う場合、時価総額や価格だけでは判断できないこともたくさんあるからね。CoinGeckoは、情報収集に多少時間がかかるけど、ある程度の取引量がある実態のあるアルトコインしか載せないと決めているんだ。載せているコインの数では、世界で2位だと思う」

 

 

 

2017年、爆発的にPV(ページビュー)数が増えた

2017年は、二人にとって、これまでになく忙しい1年になった。

「2016年まではこのサイト運営は結構退屈な仕事だった。でも、2017年に入りビットコインが世界中で話題になって、すごく忙しくなった。シカゴオプション取引所も、ビットコイン先物取引を上場したしね。
最近では、ICOや新しいアルトコインの情報が毎日10〜20件もメールで送られてくる。
そのうち、どのコインを載せるかが重要なのだが、世界中の一定量の取引がある約70の取引所とはコネクションがあり、そこで取引されているアルトコインは掲載することにしている。
世界には100以上の取引所があり、CoinGeckoも徐々に取引所とのコネクションもつくっているが、取引量が少なすぎるところや、聞いたこともないようなアルトコインだけしか取引していないような取引所とは今のところ連携はしていない」

 

最も扱いが難しいのがICO案件だという。

「ICOはなぜかロシアで活発のようで、しょっちゅう新しい案件の情報が来る。韓国の案件も多いね。
ICOは、資金調達を終了したら会社が消えてしまうようなものもあるし、将来に渡って開発者がきちんとそのコインを運用するかどうかは、5年後、10年後にならないと分からない。
だから、ランク付けはせずに、資金調達を終了する順番に並べるだけにしている」

 

ちなみに、仮想通貨もICO案件も、掲載だけなら無料。上位に来ているものが実は広告だった、ということはない。

 

 

 

やりたいことはまだまだある

PV(ページビュー)数は着実に増えており、それに伴い広告収入も増えている。

登録会員数は10万人。トラフィック数は月に2500万で、米国、ドイツ、ロシア、日本、英国など世界中から閲覧されている。

「サイト開設当時から、外国語ができる友達に頼んで多言語対応を進めていて、現在では15カ国語に対応している。ただ、仮想通貨のことを知らない翻訳者に頼むと正しく訳されないこともあるので、今後は仮想通貨のことを理解しているプロに頼もうと思っている」

2017年には「2017年第3四半期暗号通貨レポート」を発行。多言語対応しており、日本語のレポートも無料でダウンロードできる。さまざまな角度からの分析がなされており、「1BTCでビッグマックがいくつ買える?」などユニークなチャートもある。

 

2017年仮想通貨レポート

 

創業から基本的にはずっと二人でやってきた。

現在ではパートタイムのプログラマーを4〜5人雇っているが、この業界は進化のスピードが速く、プログラマーの数を増やし、プログラミング、マーケティングなどももっと力を入れていく。

 

もちろん、新しいことも始めたいという。

 

「やりたいことはまだまだある。購入したアルトコインの価格がいつでも確認できるようなウィジェットを作りたい。
サインインしたら、興味あるアルトコインを上の方に並べて見やすいようにカスタマイズできるようにしたい。雑誌などに転載しやすいようなチャートを作りたい」

 

2018年、CoinGeckoがどう変化していくのか楽しみである。

 

CoinGecko
https://www.coingecko.com/ja