中華系公立小学校10校新設へ認可

マレーシアの教育省は10月26日、中国語で教育を行う中華系の公立小学校(Sekolah Jenis Kebangsaan Cina, SJKC)10校の新設を認可したと発表した。与党連合に属する中華系政党MCA(Malaysian Chinese Association)と、Gerakan(グラカン)の要請も考慮したうえでの判断だという。

新設されるのは、クアラルンプール近郊のセランゴール州と、シンガポールに隣接するジョホール州に各5校ずつで、両地域とも中華系の人口が増えているエリアである。また、中華系の人口の増減に合わせ、既存の公立小学校6校の移転も発表された。

マレーシアには現在1298校の中華系の学校があるが、そのうち政府の補助を受けているのは883校。454校は定員割れ、または生徒数が150人以下である。

 

 

【THE KLの視点】

多民族国家マレーシアの教育制度は複雑である。

政府の補助がある一般的な公立小学校ではマレー語で授業が行われ、英語の授業もある。一方、中華系小学校は中国語(マンダリン)、タミル系小学校(Sekolah Jenis Kebangsaan Tamil, SJKT)ではタミル語で授業が行われ、英語とマレー語の授業もある。

中等教育以降、中華系とインド系マレーシア人は、マレー語で授業が行われる公立校か、授業料が高めの独立系(主要言語は英語か中国語)の学校へ進学する。なお、公立の初等、中等教育は無償である。

マレーシア人の言語レベルは初等教育と家庭環境によってかなり左右されるといっていいだろう。例えば、中華系の学校で教育を受け、家庭内の会話も中国語の中華系マレーシア人の場合、英語とマレー語は理解できるが苦手という人が珍しくないし、マレー語で教育を受けてきた中華系マレーシア人で漢字が読めない人は多い。また、最近では将来のために中華系の学校にこどもを通わせるマレー系も増えてきている。

多民族、多言語な国家ゆえに複数の言語を理解できる人が多いが、そのレベルは実にさまざまなのである。

マレーシア経済の発展は、特に華人の貢献なくしては語れない。しかし、政策上、公教育では課題もあり、優秀な人材が国外(シンガポールなど)へ流れていく傾向も。また選択肢として国内のインターナショナルスクールを検討する富裕層も増えている。