ASEANや中東も視野に マレーシア、ハラルマーケットのハブへ

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「ハラル」とは何か?

 

訪日するイスラム教徒の外国人観光客が増え、また2020年に開催される東京オリンピックを前に、日本でも「ハラル」という言葉をよく耳にするようになった。

ハラルとは、イスラムの教えで「許されている」という意味のアラビア語だ。豚肉やアルコールなど、イスラム法において禁止されているものを含んでいないというというだけでなく、清潔で摂取しても安全であることも重要とされている。

ひと昔前は、マーケットに並ぶ野菜や魚などは原材料がわかるような食品がほとんどで、消費者が見た目でハラルかどうかの判断ができたが、加工食品が多い現代では何が含まれているか、どうやって加工されたのかがわからない。そこで、イスラム教徒の消費者にわかりやすいように「ハラル認証」というシステムが整えられてきたのである。

ハラル認証の審査では、牛や鶏などならイスラム法に則った方法でイスラム教徒によって処理されたものかどうか、加工食品なら添加物など原材料にいたるまでハラルかどうか審査される。豚由来の成分が混入する可能性が排除されているか、工場内が清潔かどうかも重要な審査ポイントだ。

ハラルかどうかが問われることが多いのは食品やレストランだが、ホテルや食品などを運ぶ輸送業者がハラル認証を取得するケースもある。

マレーシアでは、マクドナルドやピザハットなど多くの大手ファストフードブランドがハラル認証を取得している。店頭にハラルマークが掲示してあれば、イスラム教徒は安心して食事を楽しめるわけだ。

 

 

ハラルマーケットの将来性

米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターの予測によると、2070年には世界のイスラム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年にはイスラム教徒が世界の最大勢力になる見込みという。今後、ハラルマーケットが成長していくことは明らかだ。

なかでも、国民の所得が上がりつつあるマレーシアや、世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアは日本からも近く、ハラルマーケットを目指す日系企業が足掛かりとするには最適な国といえる。

 

 

マレーシアのJAKIMハラルが信頼される理由

マレーシアのようにイスラム教徒のマレー系に加え、中国系やインド系も多く住んでいる多宗教な国では、ハラル食品とノンハラル食品が混在して流通している。一方、サウジアラビアなどでは流通している食品は基本的にハラルなものであり、「ハラルマークがあるか」などは気にする必要がない。

つまり、多宗教な環境だからこそ、マレーシアでは「ハラル認証」のシステムが必要とされ、政府が主導となってハラル認証システムを整えてきたのである。

現状、ハラルの審査に世界的な基準は定められていない。世界各地のイスラム教団体が独自の基準を設けて審査を行い、認証した食品や会社に独自の「ハラルマーク」を発行している。日本のようにさまざまなハラル認証機関が並存している国も少なくない。

そんななか、マレーシアのように政府機関がハラル認証を行っている国は希少で、そのためマレーシアのハラルは国際的にも信用度が高いとされている。

マレーシア政府下のハラル認証機関マレーシア・イスラム開発局(JAKIM)は、世界40の国や地域の66のハラル認証機関と相互認証を行っている。つまり、マレーシアのJAKIMからハラル認証を取得すれば、その他40カ国のハラルマーケットも狙えることになるのだ。

 

 

マレーシアから世界のイスラム市場へ

マレーシア政府は「世界のハラルハブを目指す」という国家戦略を立ち上げている。

2016年のマレーシアのハラル製品の輸出額は 420 億リンギに達し、2020 年までに 500 億リンギに達すると予測されている。また、マレーシア政府の外郭団体でハラル産業を振興しているハラル開発公社(HDC)は、サウジアラビア政府とハラル産業振興に関して提携する方向で調整を進めている。

日系の大手企業のなかにも、JAKIMのハラル認証を取得するところが増えてきた。

日本通運の現地法人、マレーシア日本通運株式会社は、JAKIMから「運送」と「倉庫」に関してハラル認証を取得。日本国内でも、JAKIMの相互認証機関である日本ハラール協会から、同じく「倉庫」と「運送」のハラル認証を取得しており、マレーシア-日本を一貫してハラル体制で輸送する体制を実現している。

日本ハムのマレーシア現地法人は、ハラル認証を取得した唐揚げなどの冷凍食品をマレーシアで販売しており、2018年には「ハラル工場」も完成する見込み。マレーシアを拠点として、ハラル食品をアジアや中東へ輸出する計画だ。

マレーシアのハラルは今後ますます国際的重要性を増していきそうだ。