マレーシアで不動産投資する際に必要な基礎知識

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“マレーシアに移住をする定年後のリタイア世代が多く、移住ブーム到来!” 約5年程前、このように各メディアがこぞってマレーシアを取り上げた。多くの日本人、特にリタイアした60代や70代の多くがMM2Hビザ(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム・プログラム)を利用し、コンドミニアムを賃貸・購入し、現在も多くの高齢者が暮らしている。
 団塊の世代によるマレーシアブームが過ぎ去り、日本人による不動産購入は減速しているかにみえる。しかし不動産業に身を置いている私が感じるに、マレーシア不動産の需要は変わらない。むしろ、物件1ユニット(=1戸)あたりの購入平均金額が上昇し、以前に増して売買が盛んになっている。特に富裕層によるマレーシア不動産の需要は高い。では、なぜ富裕層にマレーシアの不動産が選ばれるのだろうか。今回は当地で不動産投資する際に必要な基礎知識について述べたい。

 

1、マレーシア国家

 マレーシアは東南アジア中心部に位置し、イスラム教を国教とするアジアでは珍しいイスラム国家である。国旗は赤、白と青を基調とし、イスラム教の象徴である三日月と星が描かれている。人口は3,220万人2013年に3,000万人を突破して以来、毎年50万人のペースで増加している。生産年齢人口(15~64歳)は約70%で、61.3%の日本とは大きな差があり、如何に若者が多いかわかる。

 首都のクアラルンプール連邦直轄地は約180万人だが、行政機関が配置されているプトラジャヤエリアを併せたクアラルンプール首都圏では約700万人になり、日本で比較すると大阪・関西圏(約1,219万人)と名古屋圏(約500万人)の間あたりと言える。人口のうち、マレー系(イスラム教徒)が68%を占め、中国系が25%、インド系が7%と続く。世界ではあまり類を見ない様々な人種が暮らす国家が形成されている。そのため、言語は英語が広く使用され、公文書でも英語のものも多い。

 

2、日本とマレーシア

 1957年に当時の内閣総理大臣である岸信介首相が初めてマレーシアを訪問し、マレーシアと日本の友好が開始される。マハティール政権時には「ルック・イースト政策」という、欧米ではなく日本・韓国という東アジアの高度成長期を経験した国々をモデルに政策を施した。行政改革を中心に、公営企業を次々と民営化、1次産業中心であったマレーシアに経済改革を進めていった。

 

 マレーシアの大学では、日本語を専攻でき、両国の奨学金で多くのマレーシア人を日本へ送り出している。弊社にもこの奨学金を利用した日本語話者ローカル従業員が数人おり、日本企業の大事な人材源となっていると言える。

 マレーシアで生活して感じることは、マレー系も中華系も日本に好意的な印象を持っている。街にはユニクロや伊勢丹、イオンの店舗が溢れ、ドラえもんやクレヨンしんちゃんもマレーシアの地上波で観ることが出来る。日本食は少し高めであるが、回転ずしやしゃぶしゃぶレストランは常に行列である。また、2013年7月にマレーシア人に対する日本国内短期査証免除により、マレーシア人の訪日数はひと月で4万人を突破している。

 

3、2020年に向けてのマレーシア

 1991年、当時のマハティール首相がマレーシアについて演説を行った。この演説こそが、現在“ビジョン2020”と呼ばれ、国家基本方針となっている。大枠は、2020年までに政治、経済、社会、心理、文化のあらゆる分野で先進国入りするという目標だ。現在は最後の5年間の詳細を記した第11次マレーシア計画に則り進められている。

〇第11次マレーシア計画(主要戦略)
・公平な社会に向けた包容性の拡大
・全ての国民の福祉向上
・先進国入りに向けた人的資源の開発
・持続性・回復力のあるグリーン技術成長の追求
・経済成長を下支えするインフラ強化
・一層の繁栄に向けた革新的経済成長

〇具体例
・2020年まで年率5-6%の国内総生産(GDP)成長を目指す。
・平均月間世帯収入の約倍増、全体40%にあたる低所得者層の所得増、中所得者層の拡大。
  中間層   現在 約6,150RM ⇒ 約1万550RMへ
  低所得者層 現在 約2,500RM ⇒ 約5,300RMへ
・クアラルンプール(KL)、ジョホールバル、クチン、コタキナバルの4都市を重点開発

 

4、各経済地域

 マレー シ ア  はクアラルンプールを中心とした西海岸部に位置する西マレーシアと、観光地としても有名で日本から直行便あるコタキナバルを中心に広がる東海岸部エリアの東マレーシアに分かれる。クアラルンプールを中心にシンガポール、タイとも隣接する西マレーシア地域は政治、経済の中心地であるが、東マレーシアは観光がメインとなっているため、マレーシアの地域格差が問題になっていた。それを踏まえ、現在は5つのエリアで、それぞれの開発プロジェクトが始動している。

〇西マレーシア

① 北部回廊経済地域 

マレーシア北部に位置しペナン州を中心としている。

② 東海岸経済地域 

マレー半島東部からなり、マレー半島の人口約51%が居住している。

上記エリアは一次産業の農業比率が高い為、所得が比較的低い。よって、北部回廊経済地域では観光・ハイテク業種の誘致を行っている。東海岸経済地域は資源が多い為、資源・インフラを中心に民間の投資を呼び込んでいる。

 

③ イスカンダル計画 

 マレー半島南部でシンガポールと隣接するエリア。香港や深セン(これらは中国の経済特区)を例にマレーシア・シンガポールが広大な土地を2025年にかけて再開発する共同国家プロジェクト。

“ジョホーバルの歓喜”と呼ばれサッカーファンには馴染みが深く、シンガポール隣に位置するこちらのエリアは、移住・投資ブームの際に多くの物件が日本人によって買われた。2006年に設定された本計画から10年が経過し、完成まであと8年程。日本人も多く投資されているエリアなので、後日詳しく解説したい。

 

 

〇東マレーシア

④サラワク再生可能エネルギー回廊経済地域 

工業用港を整備し、重工業の拠点を目指す。

⑤サバ開発回廊の 5 地域が 経済開発地域 

世界遺産や自然が多くある地域。観光の拠点へ。

 

 国を挙げて2020年に向かって動いているので、マレーシアにいると成長や変化を身をもって感じることが出来る。今回はマレーシア国家の成長方針について述べた。今後は経済、為替、税金やその他広い視野の基、マレーシアの情報を発信していきたい。