マレーシアに親子留学する日本人が徐々に増えていると言われているが、難しいのは、どのインターナショナル校を選ぶかという点に尽きるだろう。

イギリス系、アメリカ系、オーストラリア系、または国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)などカリキュラムを重視するのか、合格した大学の実績かなど、生徒や両親によって重視する点は異なるだろう。

だが、どの親にも共通する想いは、子どもが潜在能力を開花できる学校で学び、将来グローバルに活躍できる人に育って欲しいということに違いない。

 

今回は、クアラルンプールのインターナショナルスクールのなかでも長い歴史を持つThe International School of Kuala Lumpur(以下、ISKL)を訪ね、日本人の生徒たちに、ISKLでの学校生活や、課外活動について取材した。

インターナショナル校の授業や学校生活がどんなものか、また子ども達がどのように学び成長しているのかを感じていただければと思う。

 

 

 

もっとも古いインターナショナル校 ー ISKLの歴史

ISKLが創立されたのは、1965年。設立当初のカリキュラムはアメリカ式だったという。

当時はインターナショナル校がまだ少なかったこともあり、英語での教育を望む生徒がISKLに集まり、1980年代には約50カ国の国籍の生徒が通う国際的な学校となった。

そのため、現在では世界のどこの大学に進学しようとも対応できるようなカリキュラムになっている。

 

ISKLがIBプログラムを導入したのは、1980年代だ。

IBプログラムを提供しているのは、高等教育にあたるディプロマ資格プログラム(Diploma Programme、以下DP)のみだが、幼児から初等、中等学年向けまですべての授業は、IBにスムーズに移行できる内容になっている。

 

 

The International School of Kuala Lumpurタイプライターの授業が行われるなど、その時代に必要とされる技術を取り入れた授業が行われてきた。

 

 

日本人とISKLとの関わりを見てみると、日本大使館が管轄するクアラルンプール日本人学校は1966年に創立されている。

1971年に中等部が開設されたが、高等部はないため、中等部を卒業した日本人の子どもたちは、帰国して日本の高校に入学するか、高等部があるインターナショナル校に入学することになる。

 

最近ではクアラルンプールにも新しいインターナショナル校が増えているが、以前はISKLでは中等部以降の日本人生徒が多く学んでいたことはよく知られている。

現在、ISKLで学ぶ日本人の生徒数は全体で33人。初等部9人、中等部 8人、高等部16人という構成だ。

 

 

International School of Kuala Lumpur今年8月に開校するアンパンヒリル(Ampang Hilir)の新校舎

 

 

 

居心地のいい日本人コミュニティ

以上のように、日本人を古くから受け入れてきた歴史があるため、ISKLの学内の日本人のコミュニティはとても成熟している。

 

日本人コミュニティとは、生徒とその父兄、そして卒業生や理事会などを含んだグループのことだ。

インターナショナル校では、日本の学校とは異なり父兄も学校と関わりを持つことが求められるため、教師や学校のスタッフと父兄の距離感は日本よりずっと近い。

 

日本でいう「PTA」のような集まりもあるが、堅苦しいものではなく、「コーヒーモーニング」とよばれるお茶会のような席で、マレーシアでの生活情報を交換し合ったり、毎年開催されているインターナショナルフェスティバルに出展するブースについての相談をしたりするカジュアルな集まりである。

 

 

The International School of Kuala Lumpur

 

 

ISKLに3年前に転校した横山さん(高校3年にあたる12年生)はこう話す。

 

「ISKLはコミュニティがとても良くて、海外に慣れていないご両親でもマレーシアの生活についてとか、どこのカフェがいいとか、そういう役立つ情報を交換できたりしてなじみやすい。とてもWelcomeな感じがします」

 

 

横山南風(みう)横山南風(みう)さん(12年生)小学校からインターナショナル校で学ぶ。ISKLに転校して約3年。IB Certificateを選択。

 

 

学校のスタッフが日本人生徒の受け入れに慣れている点も大きなメリットだ。

今年、日本の大学を受験する杉山さんはこう語る。

 

「日本人を受け入れてきた歴史があるからだと思いますが、日本に進学する際に必要な書類を発行するといった手続きにも慣れていて助かります」

 

 

杉山佳那さん杉山佳那さん(12年生)日本人学校を経て中学1年からISKLに入学。DPを選択。

 

 

新設のインターナショナル校の場合、実績がないためどのような書類を用意すればいいのか分からず、日本での受験に必要な書類の発行に必要以上に手間がかかるケースもあると聞く。

実績を積み重ねてきたISKLだからこそ、日本に限らずどの国に進学する場合でも対応できるといえそうだ。

 

 

 

インター校の連盟「IASAS」で国際交流

課外活動も充実しているのだか、特筆すべきは、IASAS(Interscholastic Association of Southeast Asia Schools)の活動である。

 

IASASとは、1982年に東南アジア(マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、フィリピン)と台湾の全6校のインターナショナル校で結成された連盟で、いわば各国でもっとも歴史の長いインターナショナル校の国際的な集まりである。

毎年、各校から選抜された生徒が集い、スポーツや芸術、数学やディベートといった分野で競い合い、国際交流を行う。

 

 

The International School of Kuala Lumpur6校が参加するIASASは、選抜された選手のみ参加できる。

 

 

スポーツは3つのシーズンに分かれており、シーズン1は、サッカー、バレー、クロスカントリー。シーズン2は、バスケ、タッチラグビー、水泳、テニス、シーズン3は、バドミントン、ゴルフ、ソフトボール、陸上と多彩な競技から選べる。

スポーツが好きな生徒は、1年で3つの競技に参加できるわけだ。

 

IASASに最近出場した藤川さんは「代表チーム(Varsity)と、二軍(Junior Varsity)があって、代表チームに選ばれたらIASASの試合でに出られます。シーズン1ではサッカー、シーズン2ではバスケで代表チームに選抜されてIASASの試合に出たのですが、インドネシアに行って試合に参加し、とてもいい経験になりました。いろいろなスポーツを経験できるのもいいと思います」とうれしそうに話す。

 

 

藤川愛珠(まなみ)藤川愛珠(まなみ)さん(11年生)タイや中国、日本のインターナショナル校を経て、数カ月前にISKLに転入。DPを選択。

 

 

前述の杉山さんも、音楽でIASASに出場した一人だ。

 

スポーツだけでなく、演劇、ディベート、音楽でもIASASの連盟があります。私はピアノで出場しました。
IASASだけでなく、マレーシアのローカルスクールとコラボしてイベントで一緒に演奏したりする機会もあります。
音楽の授業も、弦楽器と金管、合唱、ギター、ピアノ、ロックバンドから選べて、課外活動にも参加できるなどとても充実していると思います」(杉山さん)

 

 

 

自分でヒップホップダンスチームを立ち上げた

勉強やスポーツに限らず「やりたければできる環境」と言うのは、今年12年生の鈴木さんだ。

 

 

鈴木晴菜(はるな)鈴木晴菜(はるな)さん(12年生)アメリカ→日本(インターナショナル校)を経てISKLに転校して約5年。DPを選択。

 

 

「昔からダンスを習っていたのですが、ISKLにはヒップホップダンスのチームがなかったので、先生に相談したら『いいじゃない、作ったら?』とすすめてくれました。
チームメンバーは20人くらい。自分達でレッスンプランや振り付けを考えて、週一回練習しています。いろんなところでパフォーマンスする機会もあります。用事があって参加できない場合は、友達に代わりを頼んだりして支え合って活動しています。
友達でガーデニングクラブを立ち上げた人もいますし、クラブにまったく所属していない人もいます」(鈴木さん)

 

 

The International School of Kuala Lumpur

 

 

逆に、苦手なことを強制されることはないようだ。

前述の杉山さんは「スポーツは苦手でも大丈夫」とその理由をこう説明する。

 

「私はスポーツが苦手なのですが、無理にスポーツをする必要がないのもISKLのいいところです。
例えば、10年生で必須だった体育の授業で『パーソナルフィットネス』を選択したのですが、これはフィットネスジムで行う授業で、自分で組んだ運動プログラムを先生にチェックしてもらい、それに沿って体を鍛えるという内容です。身体能力で評価するのではなく、プログラムの組み方や、それをどう実践したかで評価されます」

 

得意な分野を伸ばし、苦手な分野は無理強いしない。そのため「自分は自分、友達は友達」と考えることができ、嫉妬したり、劣等感を感じることなく、自分の才能をのびのびと高めていけるようだ。

 

 

 

日本では経験できないプロムや多文化体験

最後に4人にISKLでの学校生活で楽しいことは何か聞いてみた。

 

「アメリカではアメリカ人がほとんどで、日本では日本人が多い環境だったので、ISKLのように普通の学校生活のなかで世界中の人と出会えるのはとても貴重な経験だと思います。あとはプロムですね! 11年生、12年生がおめかしして参加するダンスパーティです。こんな経験は日本ではできないと思います」(鈴木さん)

 

 

The International School of Kuala Lumpur11年生、12年生が参加するプロム

 

 

「Diversity(多様性)とはこういうことなんだなと思います。いろんな国籍の人がいて、みんな違う考えを持っていて、それを尊重し合える環境です」(杉山さん)

 

「いろんな国のインターナショナル校に行きましたが、ISKLは雰囲気が良くて、友達が作りやすいと感じます」(藤川さん)

 

「同じクラスにいろんな国の人がいるので、各国の考え方や文化の違いをクラスメイトから教えてもらえるのが楽しいですね。例えば、数学でも国によって解き方が違ったりして、みんなで教え合ったりしたこともあります」(横山さん)

 

 

学ぶ機会、成長するための機会を与えられ、その機会を逃さず活かせれば、子どもは驚くほどの潜在能力を見せるものだ。

親にできるのは、子どもに十分なチャンスを与えるところまで。チャンスを活かして成長出来るかどうかはその子ども次第だ。

ISKLは、十分なチャンスが与えられる場所だと言えそうだ。