豊かなライフスタイルに必要な「zero waste」の考え

THE HIVE

 

THE HIVEオーナー
Claire Sancelotさん
フランスで生まれ育ち、ニューヨークで学位を取得後、就職。香港へ移り、マレーシア人男性と結婚。2015年にマレーシアへ移り、2016年10月に「THE HIVE」をオープン。2児の母でもある。

 

東南アジアを拠点に活躍する起業家や経済人にお話をお聞きするTHE KLインタビューシリーズ。今回は、クアラルンプールで「zero waste」の取り組みを広めている「THE HIVE(ハイブ)」創業者のClaire Sancelot(クレア・サンスロット)さんを訪ねた。クレアさんの活動はメディアにも注目され、2017年10月には国際連合から「Sustainable development award」を授与されるなど、その活動の幅を広げている。THE HIVEとはどういう場所なのか、またzero wasteの活動への情熱について伺った。

 

zero wasteの考え

 

「zero waste」とは日本語で言えば「ゴミを出さない」ということ。

環境のため、なるべくゴミを出さないライフスタイルをどうすれば実践できるのか・・・。創業者のクレアさんが出した答えが、THE HIVEには詰まっている。

店内に並ぶのは、ガラスの容器に入ったオーガニックの乾物やドライフルーツ、調味料、オイルなどの食品。生活用品では、野菜などの食品を包んで持ち運ぶために使える蜜ろうでコーティングした布、竹の柄の歯ブラシ、金属製のストロー、月経カップ、布ナプキン、そして日本製の耳かきまで。

THE HIVEは、プラスティックを可能な限り排除した生活を送るためのツールやヒントに満ちた場所なのだ。常連客は容器を持参して買い物に来る。容器がない場合は、分解されて土に還る紙袋が用意してある。

 

 

 

When I bought many clothes, I didn't feel happiness.

 

(THE HIVEはショップロットの2階にある。)

 

THE KL:THE HIVEは2016年にオープンされたそうですが、どういう経緯でTHE HIVEというお店のコンセプトにたどり着いたのか、また、zero wasteの活動を始めた経緯について教えてください。

クレアさん:私は、フランス生まれですが、ニューヨークの大学で勉強して仕事もして、その後香港に移りました。引っ越しするとき、自分が持っている靴の数に愕然としたのです。ニューヨークは消費社会でしょう。いつもどこかでセールをしていて、いつも何かを買っていた。でも、靴や服を手に入れても幸せを感じるわけじゃないんですね。

香港で「zero waste Hong Kong」を立ち上げ、ブログも書き始めました。2015年に仕事を辞めて、マレーシア人の夫とクアラルンプールに引っ越してきて始めたのが「THE HIVE」。

なぜ、THE HIVEを立ち上げたかというと、zero wasteについてのブログなんて書いても、何の役にも立たないから。重要なのは、zero wasteを実現するための解決方法を提供すること。THE HIVEが、その解決方法なのです。

 

THE KL:「ゴミゼロ」と言うだけなら誰でもできますが、それを実現させる解決方法を提示したショップを開き、それをビジネスにするというのはなかなかできることではないですね。

クレアさん:マレーシアでは初の試みだと思います。
THE HIVEでは、オーガニックやナチュラルな食品や生活雑貨を、プラスティックの包装なしで提供しています。THE HIVEが「ゴミを出さないでどうやって生活するか」という問いに対する答えなんです。

でも、これは新しいアイデアではなく、昔はどこのコミュニティにもTHE HIVEみたいな店があって、近所の人は容器を持参して食料品や日用品を買っていた。そんな生活に戻ろうというだけのことなのです。

 

 

 

Think if you really need to buy it or not for 1 week.

 

(オーガニックやナチュラルな原材料を使ったシャンプーなどもボトルを持ってきて詰め替える形で販売している。)

 

THE KL:確かに昔は近所に食品や雑貨を売っているお店がありましたね。でも、現在の便利なこの世の中でゴミゼロの生活を実行に移すのはハードルが高そうです。

クレアさんゴミをゼロにするのはハードルが高いでしょうけど、まずはゴミを減らすことから始めてみませんか。実行すれば、20〜30%くらいは支出が減るはずですよ。

消費社会ですから、意識を変えること、マインドセットが一番難しくて時間がかかるかもしれません。とにかく、不要なものは、持たない、買わない。

 

THE KL:日本でも話題になっている「断捨離」や「ミニマリスト」と同じ考え方ですね。モノから解放されることで、仕事や家庭や人間関係などいろんな物事がうまくいくそうで、実践しているビジネスパーソンも多いと聞きます。

クレアさんそうですね、同じコンセプトだと思います。

値段のタグが付いたままの服が家にある人は多いと思います。必要ないのに買ってしまうんですよね。「欲しい!」と思ったら「本当に必要なのか一週間考えて、それでも必要なら来週買おう」と考える。そうすると結局買わないものって多いんですよ。服だけではなく、家具や生活用品も最小限にすれば広い家も必要ありません。

我が家の場合、こどもの服やおもちゃは少し年齢が上のお子さんがいる家族からいただいているし、私自身の服やコスメも気に入ったものを必要な分だけ揃えています。たくさんの服を持っていても幸せは感じなかった。それより、今は家族が健康に過ごしていられるのが一番の幸せです。

あとは、環境のことを考えてみてください。きれいな砂浜を歩いたり、美しい海で泳ぎたいと思いませんか? それなら何か行動しないと。

 

THE KL:本当にゴミゼロの生活を実行しているんですか?

クレアさん我が家も完全にゼロというわけではないんです。子どもが学校から持ち帰るものでゴミになってしまうものもあるし、オーガニックの牛乳はマレーシア国内では見つけられなかったのでオーストラリア産の紙パックのものを買っていて、これもゴミになる。でも、捨てるものはそれぐらいです。

生ゴミはコンポストで肥料にするし、再利用できるものはする。そもそも、ゴミになるものを買わないし、もらわないので、捨てるものが少ないのです。

 

 

 

Imagine more than 70 billions of people is wasting toothbrush.

 

THE KL:自分の生活を見返してみて、ペットボトルの飲み物や、ランチをテイクアウトするための容器など、ゴミをたくさん出す生活をしていると気づきました。

クレアさん:世界にこんなにゴミが増えたのは、実はここ50年くらいのこと。ゴミの問題は、プラスティック製品が大量生産され始めてから発生したのです。

昔はペットボトルなんてものはなかったでしょう? あなたがこれまでに使った歯ブラシが、今もどこかのゴミ埋め立て地に埋まっていると考えてみて。世界中の人が使った歯ブラシの数を考えると、気が遠くなりませんか。

 

THE KL:確かに! プラスティックは分解されないから、何十億本という歯ブラシやペットボトルが地球上のどこかにある・・・考えたら恐ろしいですね。でも、プラスティックならリサイクルする方法もあるのではないでしょうか?

クレアさん私の両親は紙などのリサイクルに熱心だったし、私もかつては「リサイクル」を信じていました。しかし、今ではリサイクルでできることは少ないと感じています。

例えば、マレーシアでは資源のリサイクル率は2%に過ぎないのをご存じですか。マレーシアに限らず、プラスティックの再利用には手間もエネルギーがかかって効率的ではないし、何度も繰り返し加工して再利用できるわけではないんです。

 

結局、重要なのはゴミを出さないようにすること。Reduce(ゴミを減らす)、  Refuse(不要なものは買わない、もらわない)、 Reuse(再利用)、つまりZero Wasteが大切なのです。

解決方法として、THE HIVEでは、竹の柄の歯ブラシや金属のストロー、ビニール袋の代わりに使える蜜ろうでコーティングした布などを販売しています。

 

 

(左上から時計回りに。蜜ろうでコーティングした布、竹の歯ブラシ、自然素材のコスメなど、金属のストロー)

 

 

THE KL:初めて見たアイテムも多いのですが、THE HIVEの商品はどうやって揃えていったのですか?

クレアさん初めは、スーパーのオーガニック食材売り場に行って、パッケージに書いてあるサプライヤーに連絡することから始めました。

オーガニック食品は、海外から輸入してマレーシアで小さいパッケージに詰め替えているものが多いのですが、THE HIVEでは25キロ単位で購入しています。初めはサプライヤーを探すのに苦労しましたが、すぐに向こうから売り込んでくるようになりました。

 

THE KL:25キロ単位ですか! 保存するのも大変そうですね。

クレアさん東南アジアは湿度が高いので、乾物などをいい状態で保管するにはどうすればいいか、当初は試行錯誤しましたが、二重に栓ができるガラスの密閉容器に入れて、都度補充する今のやり方に落ち着きました。

 

 

(蜜ろうのコーティングの作業は店内で行っている。)

 

 

 

'zero waste' and 'Organic' is connected if you care about planet.

 

THE KL:THE HIVEのコンセプトは、「zero waste」であり「オーガニック」なわけですが、この二つはどういう関連性があるんですか?

クレアさん両方とも、環境や地球のためという点でつながっています。

オーガニックは、体にいいもの、健康なものを食べたいというのと同時に、肥料や農薬で農家の人が健康を害したり、土壌を汚染することへの「NO!」を表明しています。

一方、zero wasteは、分解されないプラスティックを消費して捨てて、地球を汚したくないということ。二つのコンセプトが行き着くところは、地球の環境のため、ということになります。

 

THE KLオーガニックの商品は高価なものが多いですが、そこに投資をするメリットは何だと思いますか?

クレアさん確かにオーガニック食品は普通の食品に比べたら値段が高いし、誰でも日常的に購入できるわけではないですね。オーガニックの野菜や穀物は、農薬も肥料を使わないので、虫に食われたり成長が悪かったりして出荷できない分も多いし、土壌を入れ替えたりとコストがかかるので、価格が高くなるのは仕方がないことだと思います。

ただ、これはあまり知られていないのですが、例えばマクドナルドで食事をした場合、2時間後にはお腹が減ります。しかし、オーガニックの玄米や野菜を使ったしっかりした食事をしたら、5〜6時間はおなかが減らないんですよ。

あとは、やはり子ども達には体にいいものを食べさせたい、というのがあります。私は基本的にビーガンで牛乳も飲みませんが、子どもにはフランスの食文化を知って欲しいこともあって、牛乳を与えています。しかし、一般的なお肉や牛乳には動物を病気から守るために与えた抗生物質が含まれているので、化学物質が含まれていないオーガニックの牛乳を探し、オーストラリアから輸入した牛乳にたどり着きました。

多少高価でも、体にいいものやオーガニックの食品を購入するという選択は、家族が健康で幸せでいられることを考えれば、決して高い投資ではないと思います。

 

THE KL:マレーシア人のzero wasteに対する反応はどうですか?

クレアさんマレーシアの街はゴミが目に付くと思います。一方、日本やスイスの街にはゴミは落ちてないですよね。でも、だからといってマレーシア人がゴミをたくさん出しているということではないと思います。日本やスイスではゴミを目につかないところに隠しているだけ。世界のどこの国も、大量のゴミを出していることに関しては大した変わりはないと思います。

THE HIVEをオープンしたとき「買い物をするたびにゴミが出るのをどうにかしたいと思っていたが、どこで買えばいいかわからなかった。こういう店を探していた」というフィードバックをたくさんいただきました。マレーシアにも、現代のゴミの状況を問題視している人はたくさんいると思います。

 

 

 

Freedom cup is for women's freedom.

 

THE KL:漢方や手作りの調味料などさまざまなアイテムがありますが、サプライヤーはどういう基準で選んでいるのですか?

クレアさん取引があるサプライヤーのうち、女性が経営している会社が24社です。同じアイテムを売り込んできたサプライヤーが2社あって品質も同等だとしたら、私は女性が経営している会社を選びます。なぜなら、女性の立場を強くしたいというのが私のポリシーの一つだからです。女性の立場を向上させるには、経済力が必要。だから、女性の会社から買うのです。

 

(手作りの調味料や漢方薬などサプライヤーの多くが女性だ)

 

 

THE KL:THE HIVEで販売している月経カップの名前が「フリーダムカップ」になっていますが、それも同じような想いからですか?

クレアさんそうですね。インドの貧しい家庭では、生理用品が買えないために生理中は学校に行けない女の子も多いのです。学力に差がつくために、男女の格差はますます縮まらない。

女性がもっと生きやすくなるために使って欲しいのが、フリーダムカップ(月経カップ)です。フランスでは多くの女性がこれを使っています。

 

THE KL:生理用品を購入する必要がなくて、経済的にも節約になるというわけですね。

クレアさんそうです。一つ購入すれば、生理のたびに煮沸消毒して10年間使えます。タンポンや生理用ナプキンはゴミになるけど、これならゴミゼロ。節約になるし、快適だし、すばらしいアイテムだと思います。

どうしても月経カップが使えない女性もまれにいるので、そんな方には布ナプキンを使って欲しい。4〜5個購入すれば10年間は使えます。

 

(月経カップと布ナプキン)

 

 

THE KL:月経カップは日本でも通販などで見かけるようになってきました。でも、意外に高価な商品が多いですよね。

クレアさん:シリコン自体は高いものではないのですが、最初に開発したときはリサーチや実験にかなりコストがかかったと思いますよ。ヨーロッパ製の月経カップは300リンギ程度の高めの商品が多いなか、これはシンガポールの会社から購入していて、90リンギとASEAN諸国のマーケットに合った価格設定になっています。

このフリーダムカップと布ナプキンは、女性にとっては革命ですらあると思います。世界のすべての女性に使って欲しいアイテムです。

 

THE KL:最後に、THE HIVEのポリシーを教えてください。

クレアさん:まずは、zero waste。次に、コミュニティーを大切にすること。近所のサプライヤーから買って、近所の人に売る。オンラインショッピングでは、どういう人から買っているのか分からないけど、ここなら常連のお客さんはうちのスタッフのことをよく知っていて、お店は交流の場としても機能しています。そして、女性が男性と対等な立場に立てるようにすること。この3つが私がTHE HIVEで実現させたいことですね。

 

 

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「ゴミゼロ」や「環境のために」というスローガンはよく目にするものの、自分が当事者であるとは考えにくい問題である。しかし、クレアさんの「zero waste」は、竹の歯ブラシや布ナプキンを生活に取り入れるところから始めるなど、できるところから気軽に取り組める工夫が盛り込まれている。「生活を豊かにする」ということは、このような考え方を持つことから始まるのではないだろうか。そして、未来を考えた時に、今から環境のために我々ができる投資の方法がまだまだあるのではないかと感じた。(THE KL)

 

 

【店舗名 】 THE HIVE(ハイブ)
【住所】 92A, Lorong Maarof, Bangsar Park, 59000 Kuala Lumpur, Malaysia
【電話番号】 60 17 680 4221
【営業時間】 AM9:00 - PM7:00
【定休日】 日曜定休
【WEBサイト】 http://thehivebulkfoods.com/
【Facebook】 https://www.facebook.com/thehivebulkfoods/

※掲載内容は2018年1月時点の情報です。